Q&A
著作権者に無断で使うことは原則できません。
著作物が使える場合は三つに分けられます。
もっとも原則的な場合は、著作権者の許諾を得て使う場合です。
たとえば、映画館は著作権者の許諾を得て映画を上映していますし、ビデオレンタル店も著作権者の許諾を得てDVDビデオを貸し出しています。
二つ目は著作権の対象とならない使い方の場合です。
たとえば、上映権の対象となる使い方は「公の上映」ですから、不特定の人や多数の人にみせることが上映権の対象となる使い方です。それに対して、購入したDVDビデオをひとりでみたり、ご家族でみたりする使い方は不特定多数の人にみせるわけではありませんので、そもそも上映権の対象とはされていません。
三つ目は、著作権が制限される(著作権者の許諾を必要としないで利用できる)場合です。
たとえば、ビデオなどの録画機器が普及するに従い、放送番組を自分や家族などと後でみるために録画することは誰もが簡単にできる行為となりました。こういった録画は複製にあたりますが、「私的使用のための複製(著作権法第30条)」の場合には複製権が制限されています(著作権者の許諾を必要としない)ので、録画することもできます。もっとも、家庭内に準ずるような強い結合関係がないかぎり、友人にコピーしてあげることはできません。
ここで、この三つめの著作権が制限される場合の考え方について少し解説します。
これまでも技術の進歩によって著作物の新たな利用方法が出現してきました。それに伴って、著作権者のもつ権利を制限して実際の利用の状況に即した法律に改正されてきた経緯があります(上記の例に挙げたビデオの出現も一つの例です。)。昨今、技術の進歩のスピードが速くなっている中で、著作権があるがために技術の進歩が妨げられているのではないか、もっと著作権の権利制限を拡大すべきではないかといった主張があります。しかし、技術の進歩のためには著作権が制限されるのは当然だと考えることは適切ではありません。著作権を侵害するための技術が著作権により制約を受けるのは当然ですし、技術の進歩のために著作物の利用が必要な場合であっても著作権者の許諾を得て利用する方法もあります。権利制限というのはあくまでも例外措置なのであり、安易にその制限範囲を広げようとすることは適切ではありません。他人の所有物を所有者に無断で利用できないように、著作物も著作権者に無断で利用するのではなく、まず許諾を取るということが著作物の利用の原則的なあり方です。その考え方に基づいた上で、権利を制限できるのは、権利を制限することが正当と考えられる特別な場合であるべきです。
このような考え方は、日本をはじめ多くの国が入っている著作権に関する条約(「WIPO著作権条約」や「ベルヌ条約」)が、『スリー・ステップ・テスト』と呼ばれる基準を定めていることにも示されています。
『スリー・ステップ・テスト』によれば、次の3つの基準を満たした場合に著作権を制限する法律を作ることができることになります。
日本もこの基準を定めた条約に加盟していますので、日本の著作権法もこの3つの基準に沿っているとの判断に基づいて、30条から50条に権利制限規定が置かれています。これらの条文は難解な場合も多く、条文を読んでも分かりにくいかもしれません。でも、他人の著作物を使おうと思うとき、『スリー・ステップ・テスト』の3つの基準を思い浮かべていただくと、著作権者の許諾が必要かどうかある程度お分かりいただけるのではないでしょうか。