Q&A
私的使用のための複製について著作権者の権利を制限する代わりに私的録画補償金制度を設け、私的録画をする人と著作権者との間の公平をはかるためです。
私的録画も他人の著作物を複製することには変わりありませんので、本来、著作権者の複製権が及ぶと考えられます。しかし、それに権利が及ぶとしても実際に権利を行使することはむずかしいですし、ひとつひとつの私的録画をみれば著作権者の損失は大きくありません。そのため、私的録画については著作権者の権利を制限する代わりに、私的録画をする人が著作権者に補償金を支払うことにして、私的録画を行う人と著作権者の利益を調整したのです。(著作権法第30条第2項)
この制度は、1965年にドイツで最初に導入され、その後ヨーロッパの諸国で取り入れられている制度ですが、日本の制度は、ドイツなどの諸国と異なる点があります。ドイツなどでは録画機器などのメーカーが支払義務者となっていますが、日本では、補償金を支払う人は実際に録画をする人(消費者)で、録画機器などのメーカーは補償金の支払いに協力する義務者となっている点です。
本来、私的録画を行う人は、1回録画するたびに補償金を支払う必要がありますが、そのような仕組みを作ることはむずかしいので、録画機器や記録メディアを購入するときに補償金を支払った場合は、録画のたびに補償金を支払う必要はないとされています。
録画機器を買うときに補償金を支払い、DVD-Rなどの記録メディアを買うときに補償金を支払う制度としたのは、消費者に広く薄くご負担いただくほうがいいのではないかという理由からです。
ところで、アナログチューナーを備えていないデジタル録画機器は、「ダビング10」という技術で録画が制限されているデジタル録画しかできません。それを理由に、私的録画補償金の対象となる機器にあたるか疑問があるとして、補償金支払いに協力できないとする録画機器のメーカーが現れ、裁判になりました。私的録画補償金制度は著作権法で定められた制度で、対象となる機器などを政令で定めることになっていますが、裁判所は、アナログチューナーを備えていないDVD録画機器は政令で定められた機器ではないとし、対象となる機器が実際にはなくなってしまいました。これから、対象となる機器は何かを政令で定め直すことが検討されることになると思われます。
ちなみに、DVDビデオなどはコピー防止技術を施しているため複製できないようになっています。そのため、ビデオソフトメーカーはDVDビデオなどを録画源とする私的録画についての補償金は、制度の運用が始まったときから、要求も受領もしていません。