Contents

  • デジタルオーディオ
  • サンプリング、サンプリング周波数
  • 量子化、量子化ビット数
  • A/D、D/Aコンバータ
  • エラー訂正、補間
  • リニアPCMと圧縮
  • ステレオとサラウンド
  • 室内音響
  • 反射音、残響
  • 遮音
  • 吸音
  • 定在波
  • ステレオ再生の基礎
  • 定位
  • 拡がり
  • 残響感
  • マルチチャンネルとバーチャルサラウンド
  • ステレオ再生の基礎
  • ドルビーサラウンド・プロロジック
  • ドルビーデジタル
  • THXシアター
  • 家庭用THX
  • DTS(デジタル・シアター・システム)
  • ITU-R BS775-1
  • 家庭で配置する場合の注意
  • 音楽用のサラウンドについて
  • 音響機器の基礎知識
  • AVアンプ
  • スピーカシステムの諸特性(EIAJの測定法or定義)
  • アンプとスピーカと最大音圧
  • サラウンド用のスピーカ

DVD周辺技術講座

オーディオの基礎

 

デジタルオーディオ

サンプリング、サンプリング周波数

マイクロホンにより音圧変化から電気信号に変えられた時、その信号は時間的に連続しています。デジタルオーディオでは、その信号から、一定の時間間隔で標本(サンプル)が抜き取られます(図4-1)。この作業を標本化(サンプリング)といいます。1秒間に標本化する回数をサンプリング周波数(Fs)と言います。サンプルとサンプルの間の情報は捨てられ、また、Fs/2以上の周波数は正しくデジタル信号に変換できませんので(図4-2)、サンプリングの前にフィルターで取り除かれます。普通の人の耳には20KHzまでしか聞こえないとされているので、CDではフィルターの特性も考えて、聴感上問題ないように、Fsが44.1KHzに設定されています。

図4-1
図4-2
 
 
量子化、量子化ビット数

デジタルオーディオでは、サンプリングされたデータを有限な桁数の数字でデータを表します。この操作を量子化、桁数を量子化ビットと言います。この操作ために、取りうる値は、とびとびの数値になってしまいます。真の値との差を量子化ノイズと呼びますが、量子化ビット数が大きく、とびとびの間隔が十分に小さければ支障有りません。CDでは1か0しか取り得ない(2進法という)16桁の数字で表します。2の16乗=65536通りの値を取り得ることになります。実際には、-32768、-32767、------、-1、0、1、2、------、32767のいずれかの値で表され、決して、-15.3とか3.28と言う、小数点以下の数字は出てきません。

 
 
A/D、D/Aコンバータ

アナログ信号をサンプリングし、量子化するのがA/Dコンバータです。サンプリング周波数の半分以上の周波数成分が入っていると、サンプリングした時に誤りを生じるので、A/Dコンバータの前にはアンチエリアジングフィルターと呼ばれるローパスフィルター(ある周波数以上は遮断する)が入ります。CDの場合、サンプリング周波数は44.1KHzですが、半分の22.05KHz以上の成分があると歪みになるので、サンプリングする前に、20KHz以上の成分はフィルターで除去されます。
デジタル信号をアナログ信号に変えるのがD/Aコンバータです。1サンプル毎に階段状の波形を滑らかにするために、D/Aコンバータの後にもローパスフィルターが置かれます。

 
 
エラー訂正、補間

一般に信号を、記録再生したり、伝送したりする時、途中で入ってくるノイズや歪みのために信号が劣化します。その弊害を防ぐために、デジタルオーディオではコンピュータと同じように、エラー訂正のための符号を付け加え、後で演算して誤りを訂正します。記録や伝送するデータ量が少し増えることになりますが、エラー訂正能力の範囲内では、正しく復元されるので、アナログオーディオのようにノイズや歪みで信号が劣化することがありません。正しい値に復元は出来ないが、誤りがあるサンプルが判る場合には、オーディオ信号はコンピュータのデータと違って前後のデータと相関が大きいので、ほぼ正しい値を推定することができます。これをエラー補間と言います。

 
 
リニアPCMと圧縮

サンプリングし、量子化したデータ列をそのまま記録や伝送するのがリニアPCMです。伝送や記録のためにデータ量を減らす必要がある場合には、圧縮されます。

 

可逆圧縮

圧縮には大きく分けて可逆圧縮と非可逆圧縮の二通りがあります。

可逆圧縮というのは、オーディオデータの統計的な偏りを利用して圧縮する技術で,ロスレス圧縮とも呼ばれます。オーディオ信号は、コンピュータ・データのように前後のデータと何の脈絡もなく自由な値を取るわけでなく、過去のデータ列と相関を持っています。

差分PCM(DPCM)は一つ前のサンプルとの差を記録していきます。Fs/2の周波数で最大振幅の信号でない限り、差分がとりうる値は元の値よりも小さいので、情報量は少なくてすみます。差分を量子化するのに、同じ符号(プラスかマイナス)が続く時はステップを粗くして、符号が逆転する時はステップを細かくすることにより、さらに情報量を減らすのが適応差分PCM(ADPCM)です。ルールが定まっていれば、一番初めのサンプルだけ完全なデータと、差分のデータだけで元のデータが復元できます。

過去のデータ列に係数を掛けて演算し、次のデータを予測することにし、区間毎に、予測値と真の値の誤差が最小になるような係数を求め、この係数と、区間内の最初の(あるいは最初と最後の)サンプルのデータとを記録しておいて、元のデータ列を復元するのが、線形予測符号化と言う方法です。全てのデータを記録しなくて済み、圧縮することができます。

非可逆圧縮

人間の聴覚の特性を利用して、聴感に影響せずにもっと圧縮する方法があります。

最小可聴限界というのは聴覚で検知できる音の最小レベルですが、低音域や高音域ではかなり大きなレベルまで聞こえません。また、聴覚にはマスキングという現象があり、音の中のある周波数成分が強いとその近くの周波数の音は聞こえなくなります。大きな音の直後や極めて直前の小さな音が検知できない、継時マスキングという現象もあります。

そこで、聞こえない音のデータを間引いてしまうのです。この方法を利用すると圧縮率が高く取れるのが特長ですが、聴覚で検知されない情報を捨ててしまうために、元のデータを復元することはできません。それで、非可逆圧縮と呼ばれます。ドルビーデジタルやMPEG2オーディオ、MP3(MPEG1オーディオレイヤー-)、ATRACはこの技術を取り入れています。

ステレオとサラウンド

■ 室内音響

反射音、残響

音楽ホールで聴く音は、楽器から直接耳に達する音(直接音)と、壁に反射して到達する音(反射音)の総合された音です。ある瞬間に音源から全方向に発せられた音は、聴取者のところへは、最初に最短経路の直接音が到達した後、壁や床に反射した音が、経路が短い順に到来します。初めのうちは音源近くの壁や床、天井に跳ね返った音がとぎれとぎれに届きます。反射音は次第にその数を増し、何回も反射した音があらゆる方向から同時に到来する(拡散音という)ようになります。壁などで反射する度に吸音されるので、音のエネルギーは次第に減衰していきます。ホールの音の響きはこのような、時間・空間構造をもっているのです。

ホール内の音質の評価やコントロールには、基本的な統計量をおさえることが重要です。どのようなパラメータが聴感にどのように影響するかということは難しい問題であり、厳密なことはまだ研究段階です。初めの50msec以内(直接音と経路長差が17m以内)に到達した音は初期反射音と呼ばれ、直接音を補強し、また、ステージの広がりを感じさせます。拡散して次第に減衰するのが残響で、音圧が最初の1/1000になるまでの時間を残響時間と呼びます。残響は、音の響き方やうるおい、包囲感に関係します。サントリーホールの残響時間は2.1秒位ありますが、小さい空間では残響時間は短めの方が好まれます。実際に、小ホールでは壁に反射して次の壁にぶつかるまでの行程と時間が短く、単位時間当たりの反射の回数が多くなり、吸音される頻度が高いので、同じ壁材ならば残響時間は短くなります。

 
 
遮音

部屋の外に音が漏れるのを防ぐのが遮音です。漏れるところは壁でも天井でも、内部の音圧により振動します。開口部はそこの空気が振動します。遮音するには、振動しにくくする事が必要です。重たくするのが基本です。窓を二重にすると、内側のガラスは振動しても、間に入る空気とガラスがフィルターの役割をして外側のガラスの振動は抑えられます。どんなに遮音しても、どこか弱いところがあればそこから漏れます。強いところを強化するよりも弱いところを無くすと考えた方が良いでしょう。

 
 
吸音

壁などに反射して部屋の中に戻ってくる音を減らすのが吸音です。窓を開けると、遮音はできませんが、吸音は最大にできます(その場所の吸音率は1)。鉄筋コンクリートの部屋は木造と比べ遮音は良いのですが(マンションでは隣や上下と接しているのでそれでも問題になる)、吸音しないと定在波が立ちやすいので、要注意です。カーテンや絨毯で不足な場合は壁やコーナーに吸音材を用いますが、吸音しすぎると、音の豊かさが失われます。波長が長い低音域を吸音するには、厚い吸音材が必要になり、小さな部屋では困難です。

 
 
定在波

持続する音が、平行する壁や床と天井の間を反射しつつ行ったり帰ったりすることにより、特定の周波数では干渉し合って、ある場所では音圧が強く、また、別の場所では音圧が弱くなります。この減少を定在波と言います。平行する壁の間隔が0.5波長、1波長、1.5波長、2波長 ---- となる周波数で定在波は立ちます。壁間の距離が2間(ケン)で内寸が340cmだとすると、50、100、150、200 ---- Hzです。直方体の部屋では、周波数が高くなるほど隣の定在波と周波数の比が狭くなり、また吸音もされるので、目立たなくなります。低音の定在波には気を付ける必要があります。定在波の悪影響を防ぐには、-吸音する、-壁に傾斜を付ける、-音源(スピーカ)の位置を工夫するの方法があります。

 

■ ステレオ再生の基礎

モノラル音声よりもステレオの方がずっと活き活きした楽しい音になります。立体音の効果は、スピーカから聴取者の両耳に達する音を、実際の音場内にいるときに近づけることによって得られます。スピーカの配置や特性、およびスピーカに加えられる信号の性質により、効果が決まります。

 
 
定位

2チャンネルや5チャンネルなど、スピーカの数には制限がありますが、音は、スピーカとスピーカの間からも聞こえます。その方向に定位するといいます。任意の方向に定位させることを定位制御と言います。

定位制御にはレベル差制御と時間差制御があります。同じ信号を、隣り合った二つのスピーカに、レベルだけを変えて加えることにより、音の聞こえる方向を制御することが出来ます。Lに1、Rに0のレベルの信号だとLの方向から聞こえ、Lのレベルを下げながらRのレベルを上げるとだんだんRの方へ音が移動します。

カーステレオでは、視聴位置から両スピーカまでの距離が違う場合に、レベル差を変えて定位を補正する場合もあります。しかし、厳密に言えば、両スピーカからの距離が違うと、聴取位置では両方のスピーカからの音が、波長により強め合ったり打ち消し合ったりします。つまり、周波数によって音のレベルが変わり、音色が変わってしまい好ましくありません。ですから、聴取位置から各スピーカまでの距離を合わせるのが理想です。そのようにスピーカを設置出来ない場合は、近すぎるスピーカの信号に電気的に時間遅れをつけて、補正します。

 
 
拡がり

一面に拡がる虫の声や、舞台いっぱいに拡がっているコーラスのように、辺りに拡がって聞こえる音の性質は、両耳の入り口の、音圧の相関係数という指標で表すことができます。再生音場でスピーカと聴取者の位置を固定して考えると、それは、両方のスピーカに加わる信号の相関係数で決まります。両信号の瞬時瞬時の値を比較し、L・Rの信号がほぼ同様に変化するとき、相関が強いと言い(完全に比例するなら相関係数は1)、両信号のレベル差によりどこかにきちんと定位します。Lの信号に反比例してRの信号が増減するとき、逆相関と言い(相関係数は-1)、両方のスピーカの外側から真横くらいの位置に分かれて不安定に聞こえます。相関係数がゼロ(無相関)というのは、ある期間は比例し、ある期間は反比例すると言う具合に、LとRの信号が勝手に増減し、全体としたら関係ないと言う意味で、両方のスピーカの間に拡がって聞こえます。ただし、勝手に増減といっても、Lは虫の音、Rはコーラスと言う意味ではありません。収音技術によるか、あるいは、DSPで信号処理することにより、実現できます。

 
 
残響感

ステレオ再生においても、ホールと同様に残響成分が音の響きや包囲感に影響します。

家庭で再生する部屋は、映画館やホールよりも小さく、残響時間も短くなります。大きな空間の響きを出すには、大きな空間と同じような初期反射音と、残響時間が長く単位時間当たりの回数は少ない残響を、元々の信号に入れておくか、DSP等で電気的に付加しなければいけません。時間構造はこれで模すことができますが、空間的に拡散させるには、スピーカの数を増やすか、再生する部屋の反射音を利用する必要があります。スピーカの数を増やしても、信号が同一だと拡散したことにならないので、無相関にする必要があります。

 
 
マルチチャンネルとバーチャルサラウンド

実音場では、音はあらゆる方向から来る場合がありますから、SPによってそれを再現するには、スピーカが周囲に数多く分布している方が有利です。しかし、両耳は水平な位置についていますから、上下方向の方向感はにぶく、スピーカは水平面内に配置すれば間に合います。音場を再現するにはスピーカの数が多い方が有利ですが、価格やスペース、記録や伝送でチャンネル数の観点からは、少ないことにメリットがあり、家庭用は長い間、2チャンネルでした。

 

ディスクリート方式

レーザーディスクやDVDで用いられる、ドルビーデジタルやDTSでは5.1チャンネルが用いられています。5チャンネルのシステムは、前面に3スピーカを配置し、台詞の定位が安定するようになっています。途中の伝送経路も、スピーカと同じチャンネル数が用意されている方式をディスクリート方式と呼びます。

マトリックス方式

記録や伝送では2チャンネルにおさえ、スピーカは3~4チャンネルに増やすのがマトリックス方式です。元の音源を適当なレベルで足し算や引き算(逆相で加算)し2チャンネルにエンコードし、再生時には演算によりデコードします。この方式では、途中が2チャンネルですからどうしてもチャンネル間で干渉し、あるチャンネルのスピーカを鳴らそうとすると他のチャンネルからも何らかの音がもれ出てしまいます。

バーチャルサラウンド

所定位置に置いたL・Rのスピーカから所定位置にいる聴取者の両耳への、頭の形状や耳たぶの影響も含めた4つの伝達関数と、任意の位置から両耳への2つ伝達関数を用いたマトリックス演算をL・Rの信号に施すことにより、前面の2スピーカだけにより任意の位置に定位させることが出来ます。信号が5チャンネルあれば、その分の伝達関数を用意することにより、2チャンネルのスピーカで5チャンネルの定位が可能です。但しこの方法は、聴取位置がずれたり頭の形状が違ったりすると伝達関数がその分変化してしまうので、厳密な効果を上げるのは困難です。

 

■ 実際のシステム

立体音響は、家庭用よりも、映画界で先行して開発されました。1941年のディズニー映画「ファンタジア」で3チャンネルが採用されたのを始め、シネマスコープなど画面の大型化に伴って、2チャンネルよりももっと多チャンネルが好まれました。初期のマルチ音声は磁気記録でした。1976年に、フロント3チャンネル、サラウンド1チャンネルをマトリックスで2チャンネルにし、ドルビーA方式ノイズリダクションを用いて光学記録する、ドルビーステレオが開発されました。1987年に、ノイズリダクションにdBxを加えて改良し、ダイナミックレンジと周波数帯域を改良したドルビーSpectacle Recordingが誕生しました。1992年に、前面3サラウンド2チャンネルをデジタル方式で圧縮する、ディスクリート方式のドルビーデジタルが登場しました。映画用の音声は、再生される映画館と同じ音響条件の部屋でミキシングされ、映画館では、再生音圧レベルも規定され、それに必要なスピーカシステムとアンプが用意されます。

2チャンネルのステレオが家庭に入ったのは1958年のLPレコードが最初で、続いてFM放送、カセットテープ、レーザーディスク、ハイファイビデオカセット、TVと勢揃いしました。1970年代には4チャンネルも登場しましたが、うまく普及できませんでした。1982年に前面2チャンネル、サラウンド1チャンネルのドルビーサラウンド、87年にはドルビープロロジックが家庭用にも登場し、現在では5.1チャンネルのディスクリート・マルチチャンネル音声が花盛りです。

 
 
ドルビーサラウンド・プロロジック ※

ドルビーステレオとは、ドルビー研究所が70年代半ばに映画用に開発したシステムで、前面3チャンネル、リア1チャンネルを、2チャンネルのサウンドトラックに記録したマトリックス方式です。セパレーションを改善するために、定位させたいチャンネルのレベルを強め他を抑圧する、ステアリングロジックが採用されました。サラウンドチャンネルの周波数帯域は100Hz~7000Hzです。

これを家庭で再生するために、82年に前面2チャンネル、リア1チャンネルのドルビーサラウンドデコーダが導入されました。87年には前面3チャンネル、リア1チャンネルのドルビープロロジックデコーダが開発され、以後、主流になりました。

※) 「ドルビーサラウンド・プロロジック」はドルビー研究所の商標です。

 
 
ドルビーデジタル ※

これもドルビー研究所が映画用に開発したシステムです。前面3サラウンド2チャンネルの他にLFE(Low Frequency Effect)と呼ばれる低音専用のチャンネルが独立して記録されます。音声はデジタル方式で圧縮されますが、サラウンドチャンネルも20Hz~20000Hzの帯域を有します。LFEチャンネルは低音だけなので、サンプリング周波数が低くて済み、データ量が少ないので0.1チャンネルと数えられ、全部で5.1チャンネルと呼ばれます。
前面やサラウンドチャンネルにも低音は記録されますが、LFEチャンネルはそれ以上の大音量で効果を上げるために使われます。

※) 「ドルビーデジタル」はドルビー研究所の商標です。

 
 
THXシアター ※

ルーカスフィルムが提唱している、「制作時と同じ音質で再生できる設備を備えた劇場」のことです。騒音レベル、残響特性、スピーカの特性と設置方法など、スクリーンと映写機や客席の位置関係などを規定しています。

※) 「THX」はルーカスフィルムの商標です。

 
 
家庭用THX

これはルーカスフィルムが、映画館と同じ音を家庭で実現するために開発した、5.1チャンネル方式です。

家庭用THXコントローラの役割は次の通りです。先ず、全チャンネルの低音をフィルターで抜き取りサブウーファに集めLFEとミックスします。低音のピークが大きすぎるときは、電気回路で制限を加え、歪まないようにします。これにより他のチャンネルは低音が無くなり、スピーカを小型化できます。次に大きな映画館と小さな家庭での音の聞こえ方を同じにするために周波数特性を補正します。また、リアスピーカの音色が、頭の形や耳たぶの影響により高音で違って聞こえるのを補正します。これによりサラウンドとフロントの音色差がなくなり、前から後ろへの音の移動がスムーズになります。また、スピーカ位置の違いの分、タイムディレイをかけます。信号源がドルビープロロジックの場合には、サラウンドが1チャンネルですから、これから無相関な2チャンネルの信号を作り、Ls、Rsに振り分けます。

スピーカに関しては、フロントスピーカの指向特性は、水平方向に広く、垂直方向には狭い方が、定位がよいと言っています。サラウンド用としては、音波が聴取者の方向に直接放射されない、ダイポールスピーカを勧めています。また、サブウーファは、20Hzまで平坦で、105dBSPL以上再生できる能力が必要です。

 
 
DTS(デジタル・シアター・システム) ※

同じく5.1チャンネルで、音響的な部分は後述のITU-Rを採用しています。圧縮率が2段階あり、圧縮率を下げると音質が良くなるが、転送レートが高くなります。映画館に供給するのに、映像と同じフィルムに記録するのでなく、CDを利用しています。DVDではオプション音声になっていて、数十枚発売されています。

※) 「DTS」はDTS社の商標です。

 
 
ITU-R BS775-1

国際規格制定団体ITUが、映像ありなしにかかわらず、サラウンド音声を評価するための音響条件を定めた勧告です。ITU-Rは放送局向けの規格ですが、レコード会社にも影響力をもち、DVDでも採用しています。ドルビー研究所のホームページによると、ミキシングルーム設定の出発点としても優れていて、実際そのように使われているそうです。

 

チャンネル数による階級的構造

フロントスピーカとサラウンドのチャンネル数の異なるいくつかのグレードのマルチチャンネル音声システムを統一的に規定し、相互互換性を持たせています。

システム チャンネル コード スピーカー配置
モノラル M 1/0
モノ+モノサラウンド M/MS 1/1
2チャンネルステレオ L/R 2/0
2チャンネルステレオ
+1サラウンド
L/R/MS 2/1
2チャンネルステレオ
+2サラウンド
L/R/LS/RS 2/2
3チャンネルステレオ L/C/R 3/0
3チャンネルステレオ
+1サラウンド
L/C/R/MS 3/1
3チャンネルステレオ
+2サラウンド
L/C/R/LS/RS 3/2
スピーカ配置

スピーカは、聴取者を中心にした円弧上に、センタースピーカから±30゜の位置にL・Rスピーカ、±100~120゜の位置にLS・RSスピーカを配置することを基本にしています。フロントスピーカを円弧状に配置できない場合は時間差を補償する、リアスピーカ位置は厳密でないがフロントより近い場合は時間差補償が必要、となっています。また、フロントスピーカは耳の高さが理想的で、映像がある場合、センタースピーカのために音を透過するスクリーンが望まれるが、不可能な場合はスクリーンの直ぐ上か下におくべきです。リアスピーカの高さは厳密でないが、耳の位置か少しそれより高く設置し、高い場合はその分少し下向きにして、聴取位置を向けるそうです。

基本要件

2チャンネルステレオと比較して広い視聴位置で、次の要求をしています。

1. フロントスピーカ範囲で安定した方向感を得られること

2. サラウンドスピーカにより圧倒的な臨場感が得られること

3. ただし、サラウンド用スピーカによってフロントスピーカの外側にきちんと定位させる必要はない

コンパチビリティ

信号はディスクリート5チャンネルが基本ですが(LFEチャンネルは別の話)、チャンネル数が少ないシステムとのコンパチビリティの取り方を、さまざまの状況で決めています。

1. フロント/リアのチャンネル数が3/2の信号を、下位のフォーマットへ変換する時の方法
(ミキシングの仕方)

  L R C LS RS
モノ 1/0 C'= 0.7071 0.7071 1.0000 0.5000 0.5000
ステレオ 2/0 L'= 1.0000 0 0.7071 0.7071 0
R'= 0 1.0000 0.7071 0 0.7071
3チャンネル
3/0
L'= 1.0000 0 0 0.7071 0
R'= 0 1.0000 0 0 0.7071
C'=
0 0 1.0000 0 0
3チャンネル
2/1
L'= 1.0000 0 0.7071 0 0
R'= 0 1.0000 0.7071 0 0
S'= 0 0 0 0.7071 0.7071
4チャンネル
3/1
L'= 1.0000 0 0 0 0
R'= 0 1.0000 0 0 0
C'=
0 0 1.0000 0 0
S'= 0 0 0 0.7071 0.7071
4チャンネル
2/2
L'= 1.0000 0 1.0000 0.7071 0 0
R'= 0 0 0.7071 0 0
LS'=
0 0 0 1.0000 0
RS'= 0   0 0 1.0000

2. 記録・伝送チャンネル数が再生システムのチャンネル数より少ない場合の方法(チャンネルの使い方など):「サラウンド信号がない場合は、サラウンドスピーカは使わない」、「一つのサラウンド信号を二つ以上のサラウンドスピーカで再生する場合は、それぞれのスピーカに加える信号間の相関を無くし、かつ、レベルをフロントスピーカに合うように減衰させる」
放送などで2/0から3/2へ移行する場合:「サイマルキャスト方式だと、将来2/0を止めることができる」「マトリックス方式で5チャンネル伝送し、2/0で再生する場合はL、RにセンターやLS、RSの信号をミックスし、3/2で再生する場合はデコードしてもとの3/2信号に戻す」

サブウーファ・チャンネル

周波数帯域は20~120Hz。メインチャンネルにも低いレベルで低音は入っていて、サブウーハはそれ以上の効果を上げるために低音をハイレベルで再生できるようにする、あくまでもオプションです。まだ規格化はされていないが、映画ではメインチャンネルより10~12dB高いレベルで再生されます。

 
 
家庭で配置する場合の注意

映画館でL・Rスピーカは、シネスコ上映時はスクリーン内の最外側に、ビスタビジョン上映時はスクリーンの直ぐ外側に配置されます。

普通の家庭では、画面はテレビで、映画館のスクリーンのように大きくはありません。L・Rのスピーカを聴取位置から見て60゜に配置すると、画面と音の乖離が生じます。普通の映画は、画面の中に音が配置すると自然なように作られています。家庭での要注意点です。

 
 
音楽用のサラウンドについて

現在のマルチチャンネルサラウンド音声は、映画の場で発達してきました。ドルビー研究所のホームページによると、音楽では、再生音圧レベルが規定されるわけでないので、映画音声とは別物だと言っています。記録レベルの基準も、音圧レベルとの関係ではなく、記録物として歪まないレベルになっていますから、LFEと他チャンネルのレベルの関係にしても、考え方を整理しなければいけません。ITU-R規格を中心に、今後模索されるでしょう。

音響機器の基礎知識

AVアンプ

AVアンプは音声信号と映像信号の両方を取り扱い、次のような機能を持っています。

 

セレクター機能

同じディスプレイでDVDもビデオカセットも見る、同じスピーカでDVDもMDもラジオも聴くような場合に、いちいち線をつなぎ変えるのは面倒なので、スイッチ一つで切り替える機能です。

デコーダ機能

MPEG映像信号やドルビーデジタルおよびDTS音声信号は記録効率を高めるために圧縮されています。D/A変換してアナログ信号にする前に、元の形に戻す必要があります。MPEG映像のデコーダはプレーヤが持っています。

増幅機能

パワーアンプを持っています。音声信号でスピーカを鳴らすには、数ワットから数十ワットの電力が必要です。プレーヤから出た、数ミリワット以下の音声信号をそこまで強めます。

 
 
スピーカシステムの諸特性(EIAJの測定法or定義)

スピーカの特性を表す用語の意味を解説します。

 

定格感度レベル

再生可能な周波数範囲の、1ワットのピンクノイズを加えた時の、1m離れた位置の音圧レベル。メーカーによっては出力音圧レベルと言っているが、これは、正弦波を用いて4つの周波数で測定した平均値であり、古い測定法です。

インピーダンス

交流電流に対する電気抵抗(流れにくさ)。直流抵抗の他に、ボイスコイルが振動したときの逆起電力の影響や高い周波数ではボイスコイルがコイルとして働くので、周波数により変化する。直流抵抗よりも大きな値になります。

周波数レスポンス

一定電圧の正弦波または帯域ノイズ信号を加えたとき、スピーカ正面の音圧周波数特性。音質に大きな影響を与えます。

パワーレスポンス

スピーカからあらゆる方向に放射される音のパワー(1秒当たりに放射されるエネルギー)の、周波数により変化を示します。

実行周波数範囲

周波数レスポンスにおいて、定格感度レベルもレベルが10dB落ちる(約1/3)周波数範囲を実行周波数範囲と定義しています。メーカーによっては、自社定義である、「再生周波数帯域」で表現しています。

最大入力

スピーカに加えることができる最大入力電力。アンプの最大出力がこの値より大きいと、振幅が大きくなりすぎてどこかがぶつかったり、ボイスコイルが焼け切れたりして破損する危険性があります。あくまでも、壊れないという値であって、音質を保証する値ではありません。

 
 
アンプとスピーカと最大音圧

映画館では、映画音声をミキシングしたときと同じ音圧レベルで再生しますが、家庭ではそういうわけにはいきません。近隣や家族に迷惑を掛けないよう、妥協点を探し、それ相当の音圧レベルで再生できる機器をそろえて下さい。音質の好み以前の、基本的な条件です。

スピーカから1メートルの位置で90dBSPLの音圧を得ようとすると、感度が90dBSPL/Wのスピーカならアンプ出力は1W、84dBSPL/Wのスピーカなら4W必要です。平均90dBSPLの音圧でも、瞬時的なピークの最大値は18dB上だとする(音源により差がある)と、それぞれ、64W、256Wの相当のスピーカとアンプが必要です。音圧は音源からの距離に反比例するので、スピーカからの距離が2メートルであれば、聴取位置での音圧を同じにするためにさらに6dB上の音響出力(4倍のパワー)が必要です。

 

スピーカの最大音圧

スピーカの定格感度レベルは1W入力時の音圧です。定格感度(出力音圧レベル)と最大入力から最大音圧を求めます。音圧は電力でなく電圧に比例するので、100W入力なら、定格感度レベルの√100=10倍の音圧が得られます。デシベル計算だと、最大入力に応じて、10W=10dB、20W=13dB、40W=16dB、50W=17dB、100W=20dB、160W=22dB、200W=23dBを加えれば最大音圧が求まります。

スピーカの感度を上げると低音が出にくくなり、両立させるには大きなキャビネットが必要になります。大きなスピーカキャビネットを5個も室内におくのは大変なので、低域専用のスピーカを設け、他のスピーカシステムは小さくても済むようにしたのが、5.1チャンネルです。

スピーカの最大入力というのは、そこまでの入力なら破壊しないという値であって音質を保証する値ではありませんが、他に、最大音圧を示す項目がないので、定格感度と最大入力を一つの目安とするしかありません。音圧は振動版の加速度に比例し、同じ音圧を得るためには、振幅は周波数の二乗に反比例します。50Hzでは100Hzの4倍の振幅になり、大振幅でも歪なく再生するためには、磁気回路に余裕を持たせなければいけません。信頼できるスピーカの値段が高くなる一因です。

スピーカインピーダンスとアンプ最大出力

インピーダンスの低いスピーカのボイスコイルは、太い線を少ない回数、インピーダンスの高いスピーカのボイスコイルは細い線を多数回巻いてあります。同じ1ワット入力の場合、前者の方が、電流が多く流れますが、後者のほうが、巻き数が多いだけ力を受ける場所が多くなります。結局、同じ磁気回路を使い、ボイスコイルの占める体積が同じならインピーダンスに関わらず感度は同じにできます。インピーダンスが高い方か低い方、どちらかが有利ということではなく、アンプとの関係を考えて設計する問題です。

アンプの最大出力は電源電圧(アンプ内部の直流電源)とトランジスタに流し得る最大電流で決まります。一般にスピーカのインピーダンスが低い方がアンプの最大出力は大きくできますが、直流電源を作るためのトランスの巻線抵抗によって、大電流を流すと電圧が降下してしまうので、スピーカインピーダンスと最大出力の関係は、アンプの機種により異なります。大きな電源トランスを持っているアンプは、電圧降下が少なく安定していますが、コストが高くなります。

同じスピーカを並列に接続するとインピーダンスは半分になり、振動板面積が倍になり、感度(1W入力に対する)は3dB上がります。しかし、アンプで指定しているよりも低いインピーダンスのスピーカを接続すると、電流が流れすぎてアンプが破損する危険性があるので、絶対に避けて下さい。

dB(デシベル)

電気や音響で、基準値に対する比率を指数関数で表す表現方法。人間の心理では、音圧が1から10に変化するのと10から100に変化するのを同じ程度の変化と感じるので、このような表現が用いられる。電圧なら、基準電圧V0に対するV1の値を20 log(V1/V0)dBと表す。電力ならば、基準電力P0に対するP1を10 log(P1/ P0)dBと表す。20dBとは電圧ならば10倍、電力ならば100倍のことであるが、P=V2/R(P=電力、V=電圧、R=電気抵抗)なので、両者は同じことである。

dBSPL

SPLはsound pressure levelの略で、音圧の単位。人間に聞こえる最小の音圧 2×10-5 Pa(パスカル)を0 dBSPL と定め、それ何倍かという比率をdBで表している。

 
 
サラウンド用のスピーカ

AVアンプは音声信号と映像信号の両方を取り扱い、次のような機能を持っています。

 

サブウーファ

普通のスピーカシステムは、低音まで充分再生できるようにして感度を高くするには大きなキャビネットが必要です。低音だけ感度が高くなるように設計されたスピーカを一つ用いることにより、全体のスピーカを小さくすることができます。

ダイポールスピーカ

普通のスピーカシステムはスピーカユニットの背面をキャビネットで覆い、全面からしか音が放射されないが、振動板の両面から放射されるようにしたスピーカシステム。キャビネットの背面にも同じスピーカユニットを取り付け、電気的に逆相に接続した物もあります。正面と背面から出た音の干渉のために、周波数特性は波長の長い低音ほど低下します。また、指向特性は8字型で、真横には放射されません。指向特性を活かし、視聴位置に直接音が届かない向きに設置して、サラウンド音再生スピーカとして用いられますが、ジェット機が前から後ろへ飛んでいくような場合の定位は得にくくなってしまいます。

 
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